落球探査

 

落球探査の概要
落球探査の原理
落球探査システム
落球探査の特徴
落球探査結果の検証
現状の調査法との比較

 

【落球探査の概要】

 

落球探査は、地面に加速度センサー内蔵のボールを落下させることで、対象地盤の「変形特性」を容易にかつリアルタイムに得ることができる技術です。 

落球探査から得られる変形特性を用いれば、例えば、盛土の締固め管理、良質土の判定、基礎地盤の支持力推定等の効率化が図られます。

 

 

落球探査を用いた調査状況(盛土の締固め管理)

 

 

 

【落球探査の原理】

 

図−1より、ボールを地盤に落下すると地盤が変形し、その変形の様子が地盤特性により異なることが分かります。例えば、硬い地盤は、ボールと地盤の接触する時間が軟らかい地盤に比べて短くなります。すなわち、落球探査は、ボールを落下した際のボールと地盤との接触過程に着目し、それを効率よく測定することで地盤の変形特性を推定します。

具体的には、測定したボールと地盤の「接触時間」をHertzの提案した理論式に代入し、探査対象地盤の「変形係数」を推定します。尚、上記の理論式は理想弾性体を対象としたものであり、地盤材料に適用する際は、探査結果をもとに求められる「弾塑性係数」を用いて補正をする必要があります。

このように、落球探査結果を用いれば、理論式を介して直接的に対象地盤の変形係数を推定できます。

 

 

図−1 ボールを落下したときの地盤の変形

 

 

 

 

 

【落球探査システム】

 

落球探査システムは、軽量硬質ボール(約17.8 kg)、取手、加速度センサー、センサー用電源、A/Dボードおよびノート型パソコンにより構成されています(図−2)。尚、加速度センサーはボールに内蔵され(図−3)、探査の際はこのボールを一定の高さ(50cm)から自由落下し、変形特性の推定に必要なボールと地盤との接触過程を測定します(図−4)。

 

図−2 落球探査システム

図−3 落球ボール内部(加速度センサー)

図−4 加速度センサーによる接触過程の測定例

 

 

 

【落球探査の特徴】

作業性が優れている

 作業時間が10秒/点であり、短時間で広い範囲の地盤特性を面的に評価できます。また、短時間で数多くの調査が可能なため、地質条件が複雑な箇所の材料選定等の調査にも有効です。さらに、反力を必要としないため、盛土をはじめ埋戻し、裏込め等の作業スペースが制限される土構造物を対象とした調査にも有効です。

 

変形係数を用いる

 構造物の基礎地盤や路床等の支持力を求める際に必要な地盤の変形係数を簡易に推定できます。また、盛土の締固め管理で、一般的に実施されている密度計測よりも締固め特性を敏感に評価できるとされる変形特性を、簡易にかつリアルタイムで推定できます。

 

理論的背景に基づいている

 探査結果から理論式(Hertzの理論式)を介して直接的に地盤の変形係数を推定できます。つまり、地盤毎に調査から得られる物性値と変形係数との相関関係を用いて、間接的に変形係数を推定する必要はありません。

 

適用地盤が広い

 広い範囲の地盤材料に適用できます。つまり、上記のように落球探査は、理論的背景をもとに地盤の変形係数を推定しているので、探査結果に大きな影響を及ぼすと考えられる対象地盤の粒径等に応じて落下ボールの寸法を変えることができ、粘土から礫まで広い地盤材料に適用できます。

*尚、落球探査の探査範囲は種々の検討結果より、表層から「10〜20cm」程度と推定されます。

 

 

 

 

 

 

【落球探査結果の検証】

 

落球探査結果の妥当性を検証するため、様々な地盤材料を対象とした落球探査により推定した変形係数と平板載荷試験から推定した変形係数の比較を実施します。図−5にその結果を示します。同図より、両者は広い範囲の地盤材料においてよく対応しています。

 

 

−5 落球探査結果と平板載荷試験結果との比較

 

GS-F(1)および(2):細粒分混じり砂質礫

G-FS:細粒分砂混じり礫

CL:粘土

 

 

 

 

 

 

【現状の調査法との比較】

 

最後に、落球探査と同様、現場で容易にかつリアルタイムに地盤材料の変形特性を求めることができる現状の主な調査方法を表−1に整理します。同表より、現状の調査法は多くは、測定された物性値を介して間接的に変形特性を求めており、変形係数を評価する際「地盤材料毎の相関関係」が必要です。また、重錘のサイズが小さいため、対象地盤の粒径等の影響を受け易く、「広い地盤材料への適用」が困難です。

一方、落球探査はその特徴を考慮すると、上記の問題点を解決できます。

 

 

表−1 現状の主な調査法の比較

調査名 調査方法 測定される物性値 変形特性算出法
球体落下試験 鋼製の球体(D9cm、質量:4kg)を60cm程度の高さから地面に自由落下させる。 地面に生じた窪みの大きさ(D値)を測定する。 D値と変形特性との相関性を評価する。
重錘落下による荷重・変位測定(HFWD 重錘(515 kg)を535cmの高さから自由落下させる。 載荷板(φ9cm)にかかる衝撃荷重と変位量を荷重計と加速度計を用いて測定する。 衝撃荷重と加速度を積分して求めた変位量からK値を算出する。

衝撃加速度法

による重鎮落下

圧電加速度計を内蔵したランマー(D5cm、質量:4.5kg)を45cmの高さから地面に自由落下させる。 ランマー落下時の衝撃加速度(最大値:la)を測定する。 衝撃加速度と変形特性との相関性を評価する。

 

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